子供の目とデジタルデバイスのリスクを考える
今年7月に文部科学省が公表した2020年度学校保健統計調査の結果によると、裸眼視力が1.0未満の割合が小学生で37.52%、中学生58.29%で過去最多を更新しました。
お子さんの視力は確実に低下しています。
また、全国の眼科医371人を対象とした調査では、2018年の1年間で約42%にあたる158人の眼科医が「ものが二重に見える」などの症状を訴える若い方の診察をしたことがあると答えました。
その症例のうち、77%の眼科医らが「スマートフォンなどのデジタルデバイスの使用が関連している」と答えました。
※参照
浜松医科大学医学部附属病院 病院教授 佐藤美保先生の研究グループによる調査結果です。
日本弱視斜視学会「スマートフォンなどと後天性内斜視の関係」2019年6月より
今の子供は何歳からスマホを使っているのか?
近年ではスマホ育児という言葉も耳にします。子供の面倒を母親がずっと見ている状況で、小さな子供にスマホを使わせる状況を言います。当院の患者さんを観察していると、2歳程度でもスマホを上手に扱っているお子さんもいらっしゃいます。
内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、0歳でインターネットを見ている赤ちゃんは約5%ほどです。
※令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査報告書
https://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/r01/net-jittai/pdf/2-3-1.pdf
1歳では約20%、3歳になると50%以上の子がインターネットを利用しています。
ここでのデジタル機器とは、テレビやビデオを見ること、ゲームをすることを言います。
WHOは5歳未満の子供のための身体活動や座りがちな行動および睡眠に関する新しいガイドラインで子供が健康に成長するために、座る回数を減らして遊ぶ必要を提唱しています。以下のリンクを参照ください。
To grow up healthy, children need to sit less and play more
https://www.who.int/news/item/24-04-2019-to-grow-up-healthy-children-need-to-sit-less-and-play-more
後天性内斜視とは?
何らかの原因で片方の視線が内側に寄ったまま戻らなくなる症状を言います。
症状
斜視は乳幼児期に家族が眼の位置や動きの異常に気付いたり、保育園、幼稚園などで指摘されて受診されることが多いです。
視線がずれる
眼の動きがおかしい
頭を傾ける
片目をつぶる
などいろいろな症状があります。
後天性内斜視の原因
屈折異常
頭の病気
原因のひとつにスマホやゲーム機などの「デジタルデバイスの使用」と言われていて、「スマホ斜視」とも呼ばれています。
スマホやゲーム機などは目元から50cmくらいの距離で操作をします。近距離ゆえ、お子さんはメガネがなくてもよく見えます。その状態で見続けると眼が内側に寄って、いざ遠くを見ようとしてもすぐに対応できないため、物が二重に見えなどの症状が出ると言われています。
特にお子さんの場合は、視力が発達する感受性期の段階です。この時期に長時間スマホを見ることは視力の発達にも影響を及ぼし、急性内斜視や近視などの眼の疾患を発症する可能性もあるため注意が必要です。
小児から30歳程度までの若者世代で内斜視=後天性内斜視が増加している状態です。
自宅でお子さんの様子をチェックする方法
①カメラのフラッシュ機能でチェック
フラッシュ機能をONにして写真を撮ります。
正常な方は光が瞳の中心にありますが、内斜視の可能性がある方は光が瞳の外側に写ります。
②見え方チェック
5m先の物を片目ずつ隠して見てみます。
目標のものが左右で50cmぐらいズレて見える場合は内斜視の可能性が高いです。
子供から先天性内斜視を守る対策
スマホの画面は目から30センチ以上離して見る
画面を凝視し過ぎない
意識的にまばたきをする
10分に1回は遠くを見る
コロナ禍でのライフスタイルの変化により、学校でもデジタルデバイスを使用する機会が増えました。デジタルデバイスは簡単に情報を入手できます。私たちはスマホなどのデジタルデバイスと上手に付き合っていく必要があります。特にお子さんの目の健康においては保護者の方とお子さんの間でルールを作ることも大切だと考えます。
おおるり眼科クリニック
院長 鈴木徹