【iPS細胞】世界初の移植手術 目の難病患者に
人口多能性幹(iPS) 細胞を用いた再生医療において境一例目となる加齢性黄斑変性症(AMD)の70歳代女性患者に9月12日、iPS細胞で作製した網膜色素上皮(RPE)シートの移植手術が行なわれた。
AMDが最初の治療ターゲットは神戸市立医療センターの最先端医療振興財団先端医療センター病院眼科統括部長の栗本康夫氏が第53回日本白内障学会総会のシンポジウムで報告した。
加齢性黄斑変性症は欧米で成人の中途失明原因疾患の第1位。
わが国では第4位だが患者数は最近約10年で2倍に増加しています。
iPS細胞から作製した組織を使用した再生医療の実施は、これが世界初の事例となりました。
手術では多量の出血や、重篤な有害事象の発生は確認されず、成功に終わったとのこと。
被験者は70歳代の女性。1.3mm×3mmのRPEシート1枚を、手術の条件に合致した被験者の右の眼球の網膜下に移植しました。
手術を行った眼科医師、栗本氏は、「RPEシートの移植の安全性や視機能への影響を客観的に評価するのは、手術してから1年の観察期間が必要だと考えていると話されました。
網膜に存在する黄斑部は、視力に関わる機能を持ち、正常ならへこんだ形状をしています。
加齢黄斑変性(AMD)のうち、日本人に多いタイプと言われる滲出型黄斑変性症は、網膜の下部に存在するRPEが加齢により劣化し、異常な血管(新生血管)が新しく作られることで、黄斑部を押し出す形で変性させてしまいます。
新生血管から漏出する血漿成分や、出血で網膜が傷つき、視力の低下となります。
現在の治療法は、抗血管新生薬である抗血管内皮増殖因子(VEGF)治療などが挙げられるが、新生血管を抑制するだけで傷ついた網膜色素上皮(RPE)を修復することはできていない。
そこで、被験者の網膜下に存在する新生血管や傷ついた網膜色素上皮(RPE)を除去し、その場所に自家iPS細胞由来の網膜色素上皮(RPE)シートを移植するのが今回の手術とななったとのこと。
臨床研究としてはこれからが本番で、関係機関とも連携を図りながら、万全の体制で慎重に評価をして参りたいと考えていらっしゃると医師の栗本氏は語っています。