第42回日本眼科手術学会に参加して
この2月2日(土)、3日(日)に横浜みなとみらいで開催された眼科手術学会に参加してきました。
・緑内障手術では濾過(ろか)手術のセミナーを拝聴しました。現在行われているろ過手術にはトラベクレクトミー、EX-PRESS、チューブシャント手術(プレートあり)があります。それぞれの手術の利点、適応、また手術時の注意点、経過観察の上での留意点などのお話しがあり、大変参考になりました。また、実際の症例において緑内障の手術適応や術式に苦労したケースを提示していただき、理解を深める事に大変有意義でした。
・涙道診療のセミナーでは涙液の動態、涙道周囲の解剖、流涙症を生じる結膜弛緩症の病態、治療上での注意点、手術手技等の話題や先天性鼻炎涙管閉塞(1才までの自然治癒率は90%であり、6才以降に治療率が向上するため、6ヶ月〜1才くらいまでは経過観察をする等)のお話や小児で流涙症を生じる疾患(内反症、角結膜炎、緑内障etc.)もしっかり鑑別する必要がある等を拝聴しました。
・白内障に関するセミナーは多焦点眼内レンズのテーマを拝聴しました。多焦点眼内レンズ(多焦点IOL)には従来の二重焦点IOLに加え、最近では焦点深度拡張型IOL(EDOF)が普及しつつあります。多焦点IOLには遠近及び中間距離が両方とも比較的良好な視力が得られる利点もありますが、単焦点IOLではない様なグレア(まぶしさ)、ハロー(光が散乱して見える)等の欠点もあります。EDOFでは従来の二重焦点レンズに比べこの様な欠点が少なく、満足度が高い様でした。
・結膜手術のセミナーでは流涙症の原因となる結膜弛緩症及び、手術方法のコツなどを解説していただきました。
また、美容形成で一部行われるそうですが、結膜美白術のリスクもお話ししていただきました。結膜美白術にはマイトマイシンC(抗がん剤)を強膜の全周に使用するため一旦は結膜、強膜は白くなりますが、その後反応性に増殖性変化が強く生じたり、目が真っ赤になったり、場合によっては強膜が軟化してしまうリスクもあり大変危険な手技であるとのことでした。
・加齢性黄斑変性(AMD)のセミナーではAMDの種類やその頻度、また、眼底写真やOCT(三次元画像解析)における各病態の読影のポイント、それぞれの特徴等を詳しく説明していただきました。さらに、最新のOCTA(OCTアンギオグラフィー)に関してもこの機械は造影剤を使用することなくAMDの病態の本質であるCNV(脈絡膜新生血管)が抽出されるため抗VEGF硝子体内注射後のAMDの評価に役立つとのことでした。
色々なセミナーに朝から晩まで参加して、しっかり勉強してまいりました。ここでは触れておりませんが、専門的で詳細な話題も豊富に提供していただき、大変参考になりました。明日からの診療に早速、役立てていきたいと存じます。