0歳から100歳までの斜視
〈0歳から100歳までの斜視〉スタッフTより
○乳児内斜視
・行える検査
①固視、追視の確認
→内斜視眼が弱視になっていないか確認するため。固
視交代ができている、嫌悪反応が見られないなどの特
徴を確認できれば視力の左右差が生じている可能性は
低い。弱視が予想される場合には、斜視弱視なのか、
器質的疾患が隠れていないかを注意深く確認する。
②調節麻痺下屈折検査
→1.50D以上の遠視や乱視が認められる場合には眼鏡
処方を行う。
③斜視角の定量
→交代プリズム遮閉試験にて測定した値を用いる。乳
幼児に対して行う場合には、プリズムを持っている
人差し指で患者の眼を交代遮閉する。ただし、乳児
は鼻根の低さや内眼角贅皮により一見、内斜視にみ
える偽斜視のこともあるため、注意する。
○間欠性外斜視
・症状
幼少期:羞明、片目つぶり、転倒
学童期: 行飛ばし、細かい目盛りを数えることができな
い
成人:複視、眼精疲労、頭痛
→小児の特徴として、正常と比べることがまだできない
ため自覚症状が乏しい。
・注意点
→眼軸長の伸長と学業という環境から近視化が進み、屈
折矯正が適切に行われていないことによる眼位コント
ロールの悪化には注意が必要。治療の第一選択は屈折
矯正。
○後天共同性内斜視
・原因
→デジタルデバイスの過剰使用との関連が報告されてい
る。また、中等度以上の近視(-3D以上)は発症のリス
ク要因と考えられ、未矯正での近業が誘引となる可能
性がある。
・治療
→治療の基本として屈折矯正と適切な近業距離、近業時
間の制限といった指導が重要。20分見たら、20分、
20フィート(約6m)遠くを見ると効果的。
○sagging eye syndrome
・所見
→開散麻痺様遠見内斜視、外方回旋を伴う微小上下斜
視、複視が典型所見。
・検査
→上下斜視の判定は水平斜視の場合と比較して難しいた
め、丁寧な交代プリズム遮閉試験が必要。
加齢に伴い上下回旋複視が増加するため、ルーティン
に上下回旋検査を入れる必要がある。
○考察
斜視で悩んでいる患者さんは多く、その年齢層は幅広い。検査や治療の課題はその年齢により異なるため、患者さん一人一人と向き合い、患者さんの抱えている問題を解決していく必要があると考える。
実際の臨床現場では、問診を丁寧に行うよう心がけたい。斜視はいつから現れたのか、どのような時に感じているかは勿論のこと、自覚症状に乏しい小児の場合には、保護者から気になる様子を聞き出したり、視線がズレている写真を見せて頂くなどして、斜視の種類を推察できるようにしていきたい。
また、どの患者様にも共通していたことは、治療の第一選択は適切な屈折矯正であるということだ。屈折異常があるにも関わらず、裸眼で生活している患者様には積極的に眼鏡を処方するべきであると感じた。処方する時には、眼精疲労や頭痛に繋がる過矯正には十分気をつけていきたい。
患者様の未来に繋がる医療を提供できるよう、患者様に寄り添う心を忘れず、技術のスキルアップに力を入れていきたい。T.Y