緑内障は日本人の中途失明の原因として上位にあり、時間の経過とともに視野の見えない部分が広がっていく病気です。
病気発症初期には気付きにくく、一度失ってしまった視野は回復、取り戻すことはできません。そのため眼科医は早期発見と早期治療の大切さを常にお伝えしています。
当院においては緑内障の患者さんには継続通院を促し、点眼と経過観察の大切さを伝えています。
緑内障は眼圧のコントロールが大切で治療には眼圧を下げる点眼薬が中心となります。
きちんと点眼を続けられればいいのですが、複数の点眼剤を使用することもあるため、仕事や生活の関係で継続通院ができずドロップアウト(中断)してしまう患者さんもいらっしゃいます。
眼科医としてドロップアウトは避けていただきたいです。ドロップアウトされた患者さんが久しぶりに来院され検査をしたところ視野欠損が大変進行していることがあります。そうならないためにも継続通院で経過観察をしていただきたいと思います。
さて、本日は軽度の緑内障むけの傷口が小さく目への負担の少ない、低侵襲緑内障手術で眼圧を下げる治療のひとつである【白内障手術と同時に行うことで点眼薬の手間を減らし治療効果を上げることが期待できるアイステント手術】についてお話ししたいと思います。
この記事は東京女子医科大学東医療センター、眼科の須藤史子教授の日経Goodayのインタビューをもとに書いています。
失明原因の第1位 緑内障は40代から増え始める
緑内障は視神経が障害され、それによって視野が欠ける病気です。目に入った光は網膜細胞で捉えられ、その信号が脳に伝えられ網膜全体の神経線維は視神経乳頭という部分で100万本の束になります。これが視神経です。
緑内障ではこの視神経が障害され消滅した視神経の領域の視野が欠けていきます。
緑内障は40代で20人に1人に見つかり、年齢が上がるにつれその数はもっと多くなっています。
失った視野は取り戻すことができない上、緑内障は中途失明原因の第1位(28.6%)ですので早期発見、早期治療が大切なことがお分かりいただけると思います。
緑内障は自覚症状もなく見つかることが多い故、40才を過ぎたら年に一度の眼科の健康診断が大切になります。
早期の段階で見つかれば治療により日常生活に必要な視野と視力を保つことができる可能性は高いです。
正常眼圧緑内障も眼圧を下げることで進行を抑えることができる
眼圧が高いほどリスクが高い、そして眼圧を下げると緑内障の進行を制御できます。眼圧を管理するために重要なのは眼球の内部を満たしている房水の流れをコントロールすることです。
房水は毛様体という部位で作られ、虹彩の付け根にある隅角(ぐうかく)という部分にある線維柱帯(せんいちゅうたい)を通って眼球の外の静脈に排出されます。
緑内障の治療は房水の作られる量や排出量をコントロールすることが大切になります。
治療は点眼が中心
緑内障の点眼治療は中止すると再び眼圧が上がるためずっと点眼を継続治療していくことになります。
点眼薬の正しいつけ方
・容器がまつげに触れないようにする
・点眼は1滴で十分
・点眼後はまばたきをせず目を閉じる
・目頭を指で軽く押さえる
点眼薬1剤程度の効果がある低侵襲手術が普及
点眼薬の負担を減らしたい患者さんや点眼薬だけでは眼圧のコントロールが難しい患者さん向けの治療が低侵襲手術です。
近年、傷口が小さく患者さんへの目の負担が小さい緑内障手術(低侵襲緑内障手術MIGSミグス)がある。
極低侵襲緑内障手術であるアイステント手術も登場
より患者さんの負担が小さく、極低侵襲緑内障手術とも言える新しいMIGSとしてiStent(アイステント)と呼ばれるチタン製の極小の管を使った手術です。点眼薬1剤分程度の眼圧を下げる効果があると言われ、2〜3剤使用している方だと薬をひとつ減らせる可能性があります。
近年ではより小さな新型のステントを線維柱帯2個挿入する手術方式が承認されアイステントインジェクトダブリューと言います。インジェクターと呼ばれる機器を用て線維柱帯に2箇所打ち込みます。新型ステントの大きさは0.36mmほどです。
アイステントは白内障手術と同時に
アイステント手術は緑内障の初期から中期の一部の人に向いている方法で、重い人は濾過手術などが用いられます。十分な効果が得られないケースは他の方法で再手術が可能なこともアイステント手術の利点の一つです。
アイステント手術は使用ガイドラインである【白内障手術併用眼内ドレーン使用要件等基準】によれば講習を受け一定の経験と技術がある医師しか施術は認められていません。
アイステント手術は白内障との同時手術でないと保険の適用は認められないことにも注意したい。
手術時間は白内障の手術にかかる時間が1眼あたり15〜30分でアイステント手術は5〜10分の追加でできます。
すでに白内障手術を受けたことのある患者さんには行えないのでチャンスは1回だけです。
最後に
40才を過ぎたら眼科専門医で眼科検診を定期的に受けて欲しいです。特に肉親に緑内障の患者さんがいる人、強度近視の人はリスクが高いのでしっかりと受診をして欲しいです。
きちんとした管理を行えば視野や視力を確保できます。必ず受診をしてください。
おおるり眼科クリニック
院長 鈴木徹