歩行訓練士が支えるロービジョンの暮らし:見えにくさと共に生きるための地域支援とは
歩行訓練士が支える「見えにくさ」との共生:ロービジョン支援と地域連携(静岡・島田市 おおるり眼科)
静岡県島田市のおおるり眼科クリニックは、視能訓練士(ORT)を中心に、ロービジョン(見えにくさ)を抱える方の生活を支えるために、医療・福祉・教育・行政との地域連携を重視しています。
視能訓練士による学びのレポート
講演「地域で歩行訓練士ができること、やるべきこと」演者日本歩行訓練士会 会長古橋友則先生のお話を聞いて
〇歩行訓練士とは?
見えない、見えにくいために生じる「歩行」や「読み書き」などの生活の不自由さに対し、一緒に考え、解消、低減していく専門職。他の障害と比べて、視覚リハの中心は「福祉」の領域となる。
・歩行訓練
→現在の保有視覚や他の感覚を用いて安全に移動する練習をする。白杖歩行だけでなく、手による伝い歩きや手引き歩行の練習も行う。
・生活訓練
→点字やICT機器を用いた「読み書き」の練習や、日常生活で必要な掃除や片付けのスキルを身につける練習
・そのほか
→相談業務や同行援護従業者の養成講師、小中学校や一般企業への啓発活動、研修のほか、眼科での研修も行っている。〇歩行訓練とはどのようなことをするのか?
●内容と方法
・白杖や歩行支援機器の選定
・屋内歩行
・手引き歩行
・単独歩行●目的
・通勤や通学、通院:公共交通期間の利用も多い
・買い物:店内は援助依頼の練習も
・余暇やスポーツに参加:生活の豊かさには不可欠
・散歩:難易度や距離を自由に設定できるメリット
・ゴミ出しや回覧板を届ける:一人暮らしの方には不可欠◯歩行訓練は全盲の人や若い人が受けるもの?
移動に関する危険や不安は、全盲の方だけでなくロービジョンの方も同様に抱えている。実際、事故や怪我をしている視覚障害者の中にはロービジョンの方もたくさんいる。
駅ホーム上での見間違いや確認不足はロービジョンの方の方が多い!
→「将来のため」、「見えなくなってから」始めるものではなく、今の生活の中で不安や不自由さがあれば、歩行訓練士と練習や確認をして欲しい。◯生活訓練とはどのようなことをするのか?
⚫︎コミュニケーション
・パソコン(音声、拡大)
・スマートフォン、タブレット
・拡大読書器
・プレクストーク(デイジー図書)
・点字
・拡大文字拡大鏡、ルーペなど(ビジョンサポート機器展2024)
大きな文字の練習帳(ビジョンサポート機器展2024)
シューズイン型ナビゲーション(ビジョンサポート機器展2024)
⚫︎日常生活動作
・掃除、片付け、整理
・調理
・洗濯、衣類の片付け
・金銭管理
・傘を畳む
・靴紐を結ぶ
・着替え、衣装◯障害者手帳があると使える福祉サービス
・同行援護事業(視覚障害者向けガイドヘルパー)
・視覚障害者向けの補装具、日常生活用具の支給
・就労継続支援B型事業
・自立訓練(機能訓練・生活訓練)事業☝🏻年齢に関係なく、また等級に関係なく該当するのであれば、手帳を取得することにメリットはある!
〇「いつでも どこでも だれでも」を達成するため
・医療機関との連携強化:支援を必要としている人と一人でも多く最短で繋がるため
・当事者団体との連携強化:歩行訓練士を知ってもらい、必要なタイミングで利用できるようにするため
・行政との意思疎通:どこに住んでいても必要な支援が受けられるようにするためには、安定した事業の継続が必要☝🏻これらは、全国レベル、地域レベルの双方での強化が必要!
〇最後に歩行訓練士古橋友則氏の立場から伝えたいこと
①障害者手帳の取得を進めて欲しい
→福祉サービスを受ける際の基本は障害者手帳の所持が大きい。5.6級であっても受けられるサービスがある。②歩行訓練士の存在。
→すぐには歩行や生活訓練に繋がらなくても、本人が前向きになったタイミングで相談できる情報、存在を事前にもっていることは大きい③スマートサイト等、情報を活用して欲しい
視覚障害者情報支援センターを通じて、地域の歩行訓練士と繋げて欲しい!〇視能訓練士滝の感想
歩行訓練士の存在は知っていたが、実際にどのような活動をしているかは詳しく知らなかったので、このような機会に歩行訓練士さんの口から直接お話を聞くことができて非常に貴重な時間であったなと感じた。
患者さんの中には、生活に困っていても歩行訓練士という存在を知らずに一人で解決しようとしている方は多くいると思うので、私たちから歩行訓練を受けられる場所があるということを積極的に伝えていくべきであると思った。
患者さんが生活するうえで困っていることを聞き出すために「何か困っていますか?」と曖昧に聞くのではなく、「調味料は間違えずに使えていますか?」「外出の際、踏み外しすることはないですか?」など生活場面を具体的に聞けるようにしていきたい。
補足解説:歩行訓練士とロービジョンケアの基礎
歩行訓練士(視覚障害生活訓練等指導者)は、白杖歩行・手引き歩行・屋内外の移動・保有視覚の活用、さらに点字や音声・拡大対応のICTまで幅広く支援します。眼科が担う「診断・治療」と、歩行訓練士が担う「生活と移動の自立支援」をつなぐことで、生活の質(QOL)は大きく向上します。静岡県・島田市エリアでも、視覚障害者情報支援センターや行政窓口と連携し、必要なサービス利用につなげることが重要です。
こんなサインは相談の合図
- 駅ホームや階段で踏み外しや見間違いが増えた
- 横断歩道や店内で距離感がつかみにくい
- 夜間・逆光・雨天など環境で見え方の不安定が大きい
- 家事・調理・片付け・金銭管理でミスが増えてきた
「将来に備えて」ではなく「今の生活の不安」が出てきた段階で、眼科・歩行訓練士に相談するのが最短ルートです。
福祉制度と手帳:支援への“入口”
障害者手帳(身体障害者手帳)は、同行援護、補装具・日常生活用具の支給、自立訓練(機能・生活)などを活用するうえで大切な入口です。5級・6級であっても対象となるサービスがあり得ます。
申請は市区町村の障害福祉担当で行い、眼科での診断書提出が求められる場合があります。当院では、必要に応じて制度案内や申請の流れをわかりやすくご説明します。
静岡・島田市エリアの相談先(例)
- 静岡県視覚障害者情報支援センター(静岡市葵区 駿府町)— 点字・録音図書、日常生活、ICT、歩行訓練などの相談を受け付け
- 各市役所 障害福祉課 — 障害者手帳の申請、同行援護などの福祉サービス相談
- おおるり眼科クリニック — 視能訓練士による見え方の評価と、歩行訓練士・福祉機関への連携
よくある質問(FAQ)
Q1. 全盲でないと歩行訓練は受けられませんか?
A. いいえ。ロービジョンの方の多くも、移動や生活の不安を減らすために歩行訓練の対象になります。駅ホームでの見間違い、段差での不安などは典型例です。
Q2. まずは何から相談すれば良い?
A. 現在の見え方の評価(視力・視野・まぶしさ・コントラストなど)と、生活場面の困りごとを洗い出すことが第一歩です。
例:「買い物中に商品が探しにくい」「階段の上り下りが怖い」「小さな文字が読みづらい」など、具体的な場面で伝えると連携がスムーズです。
Q3. 同行援護や日常生活用具は、誰でも使えますか?
A. 要件・手続きがあります。障害者手帳の所持や、支給決定のための審査・アセスメント等が必要な場合があります。個別状況に応じて行政窓口で確認しましょう。
当院からのメッセージ(まとめ)
見えにくさをひとりで抱えないことが何より大切です。
視能訓練士と歩行訓練士、行政・福祉・教育の連携で、「見えにくいからできない」から「見えにくくてもできる」へ。
静岡県島田市・中部エリアで、ロービジョン外来/視覚リハビリ相談をご希望の方は、当院までご相談ください。
参考リンク(公的・専門機関)
- 視覚障害リハビリテーション協会(JARVI)— 歩行訓練等の歴史と活動の概要
https://www.jarvi.org/about-activities/ - 厚生労働省:同行援護に係るQ&A/手続きの考え方
https://www.mhlw.go.jp/…/20110630-02-02-4.pdf - 厚生労働省:視覚障害者の機能訓練事業所に関する資料(歩行訓練士の位置づけ 等)
https://www.mhlw.go.jp/…/0000194498.pdf - 静岡県視覚障害者情報支援センター(公式)
https://i-center-shizuoka.jp/ /
静岡県公式ページ
執筆・出典
セミナー参加・レポート:おおるり眼科クリニック 視能訓練士・滝
編集・補足:おおるり眼科クリニック(医療と福祉の地域連携推進)



















