はじめに
こんにちは。おおるり眼科クリニック視能訓練士の滝です。先日、第81回日本弱視斜視学会総会および第50回日本小児眼科学会総会に参加し、
小児の目の病気に関する貴重な知見を得ることができました。
今回は、学会で得た最新の情報をもとに、
小児の目の病気の特徴や、視能訓練士としての検査の工夫について、一般の方にもわかりやすくご紹介します。
子どもの目の病気の特徴と重要性
小児の目の病気は、大人とは異なる特徴があります。お子様は自分の見え方の異常を上手く伝えられないことが多く、早期発見が重要です。
以下に代表的な
小児の目の病気をご紹介します。
レーベル先天盲
生まれてすぐから夜間の視界が悪くなる「夜盲」、視力の低下、目が揺れる「眼振」、まぶしさを感じる「羞明」などの症状が現れます。
網膜の働きを調べる検査(ERG)で反応が見られず、遺伝子検査で確定診断ができる遺伝性の
小児の目の病気です。
網膜色素変性症
夜間の視界が悪くなる「夜盲」が初期症状として現れ、徐々に視野が狭くなっていきます。
眼底検査では網膜の反射が粗くなり、OCT検査(網膜の断層撮影)では網膜の光を感じる層(EZ)が消失します。また、網膜の働きを調べるERG検査では反応が低下します。
特に男性で重症化しやすい傾向があります。
錐体杆体ジストロフィー
まぶしさを感じる「羞明」、色の見分けが難しくなる「色覚異常」、視力の低下が主な症状です。
眼底検査では「牛の目」のような特徴的な所見が見られ、網膜の働きを調べるERG検査では、特に色を感じる「錐体」の反応が低下します。
スターガルト病
主に5-6年前から視力が低下し始める遺伝性の
小児の目の病気です。視力が徐々に低下し、物を見ようとする中心部分が見えにくくなります。
目の奥の黄斑という部分が萎縮するのが特徴です。症状が心理的な原因と間違われやすいのですが、OCT検査で黄斑部が薄くなっているのが分かります。
先天網膜分離症
生まれつきの網膜の病気で、視力が低下します。遠視(遠くも近くも網膜の後方で像が結ばれる状態)を伴うことが多く、+3.00D以上の強い遠視が特徴です。
OCT検査では黄斑部に浮腫(むくみ)が見られ、網膜の働きを調べるERG検査では反応が見られません(陰性型)。
Best病
主に10代前後で発症する遺伝性の
小児の目の病気です。OCT検査で黄斑部に卵黄様の沈着物が見られ、眼球の電気的な反応を調べるEOG検査では反応が見られないのが特徴です。
視力は比較的保たれますが、徐々に低下することがあります。
錐体ジストロフィー
まぶしさを感じる「羞明」、目が揺れる「眼振」、色の見分けが難しくなる「色覚異常」が主な症状です。
網膜の働きを調べるERG検査では反応が見られません(平坦)。
青錐体一色覚
生まれつきの
小児の目の病気で、3種類ある色を感じる視細胞(錐体)のうち、青い色を感じる視細胞だけが働く状態です。
主な症状として、目が少し揺れる(軽度の眼振)、視力が通常の半分程度まで低下する、赤と緑の色の区別がとても難しくなるなどがあります。
小どもの目の病気の早期発見の重要性
小児の目の病気は、早期発見・早期治療が非常に重要です。お子様は自分の見え方の異常を言葉で表現することが難しく、保護者の方の観察が大切になります。
子どもの目の病気で注意すべき症状
以下の症状が見られる場合は、
小児の目の病気の可能性があります。
- 物にぶつかりやすい
- テレビや本を近づけて見る
- 目を細めて物を見る
- 夜間の視界が悪い
- まぶしがる
- 目が揺れている
- 色の区別が苦手
小どもの目の病気の検査について
お子様の目の検査は、大人の方とは少し異なる配慮が必要です。というのも、お子様は目の発達途中で、「見え方がおかしい」ということを上手く伝えられないことが多いからです。
私たち視能訓練士は、
小児の目の病気の早期発見のため、お子様が楽しく安心して検査を受けられるよう、以下のような工夫をしています。
子どもの目の病気の検査時の配慮と工夫
私たち視能訓練士は、まずお子様と仲良くなることを心がけています。「好きな遊びは何かな?」「幼稚園や学校は楽しい?」など、お話をしながら緊張をほぐすようにしています。
また、「目のかくれんぼをしよう!」など、遊び感覚で楽しく検査を進めるように心がけ、「すごい!上手にできたね!」と、お子様の頑張りを一緒に喜び、たくさん励ますように心がけています。
お子様の様子を見ながら、必要に応じて休憩を取り、お母様やお父様にも一緒に検査室に入っていただくことで、お子様が安心して検査を受けられる環境づくりを心がけています。
検査の流れ
小児の目の病気の検査は、以下の流れで進めます。
- お子様との信頼関係づくり
- 遊び感覚での検査導入
- 年齢に応じた検査方法の選択
- 保護者の方への説明
- 必要に応じた追加検査の提案
小どもの目の病気の診断と治療
小児の目の病気の診断には、様々な検査が必要になります。当院では、お子様一人一人の状態に合わせて、適切な検査を選択しています。
子どもの目の病気の主な検査方法
小児の目の病気の診断に用いる主な検査方法をご紹介します。
- 視力検査:年齢に応じた方法で視力を測定
- 眼底検査:網膜の状態を詳しく観察
- OCT検査:網膜の断層撮影で詳細な構造を確認
- ERG検査:網膜の電気的な反応を測定
- 遺伝子検査:遺伝性疾患の確定診断
子どもの目の病気の検査機器の概要
小児の目の病気の診断に用いる検査機器について詳しくご説明します。
ERG検査(網膜電図検査)
ERG検査は、網膜の光に対する電気的な反応を測定する検査です。網膜の視細胞(錐体・杆体)の機能を客観的に評価でき、
小児の目の病気の診断に重要な役割を果たします。
検査の流れ:
- 暗順応:30分間暗い部屋で過ごす
- 角膜に電極を装着
- 光刺激を与えて網膜の反応を記録
- 明順応後、再度検査を実施
診断できる疾患:
- レーベル先天盲
- 網膜色素変性症
- 錐体杆体ジストロフィー
- Best病
眼底カメラ
眼底カメラは、網膜の表面を詳細に観察できる検査機器です。網膜の血管、視神経、黄斑部の状態を撮影し、
小児の目の病気の早期発見に欠かせません。
検査の特徴:
- 痛みのない非侵襲的検査
- 短時間で検査完了
- 高解像度での撮影が可能
- 検査結果を画像で保存
観察できる所見:
広角カメラ
広角カメラは、通常の眼底カメラよりも広い範囲の網膜を一度に撮影できる検査機器です。網膜の周辺部まで詳細に観察でき、
小児の目の病気の進行状況を正確に把握できます。
検査の利点:
- 網膜の約200度を一度に撮影
- 周辺部の病変も見逃さない
- 検査時間の短縮
- お子様の負担軽減
特に有用な疾患:
OCT検査(光干渉断層計)
OCT検査は、網膜の断面を高解像度で撮影できる最新の検査機器です。網膜の各層の厚さや構造を詳細に観察でき、
小児の目の病気の精密診断に不可欠です。
検査の特徴:
- 非接触で痛みがない
- 網膜の10層構造を詳細に観察
- 数分で検査完了
- 3D画像での解析も可能
診断に有用な疾患:
- スターガルト病(黄斑部の萎縮)
- Best病(卵黄様沈着物)
- 先天網膜分離症(黄斑部浮腫)
- 網膜の厚み変化
検査で分かること:
- 網膜の厚み
- 各層の構造異常
- 浮腫や出血の詳細
- 治療効果の評価
保護者の方へのアドバイス
小児の目の病気が疑われる場合、保護者の方には以下の点にご注意いただきたいと思います。
日常生活での観察ポイント
以下の点に注意して、お子様の様子を観察してください。
- お子様の行動パターンの変化
- 物の見方や反応の変化
- 学校や幼稚園での様子
- 家族での遊びの際の反応
定期検査の重要性
特に遺伝性の
小児の目の病気が疑われる場合は、定期的な検査が重要です。症状の進行を把握し、適切な治療や生活指導を行うことができます。
おわりに
本学会を通じて、
小児の目の病気への対応の奥深さを再確認すると同時に、視能訓練士としての使命感を改めて感じました。
お子さんの視力検査や目の病気の相談なら、静岡県島田市のおおるり眼科クリニックへ。
小児の目の病気の診断も専門の視能訓練士が丁寧に対応いたします。
島田市周辺で
小児の目の病気でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。当院では豊富な経験と実績で、お子様の視力の悩みを解決に導きます。焼津市、藤枝市、牧之原市からもアクセス便利です。
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