子どもの近視進行抑制治療を学ぶ|第82回日本弱視斜視学会レポート
子どもの近視進行抑制治療とは?第82回日本弱視斜視学会総会レポート
おおるり眼科クリニックの視能訓練士・滝が、 「第82回日本弱視斜視学会総会」に参加しました。
今回の学会では、小児眼科に関するさまざまな講演が行われました。その中から本記事では、子どもの近視の特徴、近視が進むことで生じるリスク、低濃度アトロピン点眼による治療、近視進行抑制治療を続けるうえで大切なことについてご紹介します。
子どもの近視は、単に「遠くが見えにくくなる」という問題だけではありません。近視が強くなるほど、将来の目の病気につながる可能性も高くなるため、近視の進み方を定期的に確認することが大切です。
| ✓ | 子どもの近視が進みやすい年齢 |
| ✓ | 眼軸長や瞳孔径を測る意味 |
| ✓ | 低濃度アトロピン点眼の特徴と注意点 |
| ✓ | 眼鏡やコンタクトレンズによる近視進行抑制治療 |
子どもの近視は小学校低学年に進みやすい
子どもの近視は、特に 6歳から9歳頃の小学校低学年 で進行しやすいとされています。
この時期は、身体の成長とともに眼球も成長する時期です。初めて眼科を受診した時点で「眼軸長」が長いお子さんほど、その後の近視も速く進みやすい傾向があります。
眼軸長とは、目の前面にある角膜から、目の奥にある網膜までの長さです。身体の成長に伴って眼軸長が伸び、光のピントが網膜よりも手前に合うようになると、遠くがぼやけて見える近視になります。
子どもの近視では、眼軸長が伸びることで生じる 「軸性近視」が多くみられます。ただし、近視の原因は眼軸長の伸びだけとは限らず、 「屈折性近視」にも注意が必要です。
眼軸長が長くなくても起こる「屈折性近視」
屈折性近視とは、眼軸長の伸びではなく、角膜や水晶体などの光を曲げる力が強くなることで起こる近視です。
| ✓ | 未熟児網膜症 |
| ✓ | 円錐角膜 |
| ✓ | 球状水晶体 |
そのため、近視の状態を正しく評価するには、眼軸長だけを測定すればよいわけではありません。
角膜の形、水晶体の厚さ、角膜から水晶体までの距離である前房深度なども確認し、目全体の状態を評価することが重要です。
「近視=眼軸長が伸びている」と一つの原因に決めつけず、それぞれのお子さんの目に、どのような変化が起きているのかを確認する必要があります。
近視の進行を抑えることが将来の目を守ることにつながる
子どもの近視進行抑制治療は、現在の視力を良くすることだけを目的とした治療ではありません。将来、強度近視になる可能性や、近視に伴う目の病気のリスクを減らすことも大きな目的です。
近視性黄斑変性は、眼軸長が長くなったことなどによって、物を見るために重要な網膜の中心部分である黄斑に変化が起こる病気です。
近視を完全に止めることは難しくても、 進行する速度を少しでも緩やかにすること には大きな意味があります。
低濃度アトロピン点眼は毎日続けることが大切
低濃度アトロピン点眼は、子どもの近視進行を抑えることを目的として行う治療の一つです。
低濃度アトロピン点眼を1回忘れても、遠くの見え方が大きく変わることはほとんどありません。ただし、前日の点眼を忘れた場合には、瞳孔の大きさや近くの見え方に変化が現れることがあります。
また、点眼する回数が減ると、近視進行を抑える効果にも影響する可能性があります。そのため、決められた頻度で点眼を続けることが重要です。
| ✓ | 以前より光をまぶしく感じるようになった |
| ✓ | 本やノートなど、近くのものが見えにくくなった |
| ✓ | 近くを見るときに疲れやすくなった |
| ✓ | 見え方がかすむことがある |
必要に応じて近見視力を測定し、まぶしさがある場合には「羞明あり」と記録して経過を確認します。
リジュセアミニ点眼液0.025%の特徴
リジュセアミニ点眼液0.025%は、近視進行抑制を目的とした低濃度アトロピン点眼液です。
強膜や結膜側への薬剤伝達を改善しながら、前眼部が薬剤にさらされる量をできるだけ少なくすることで、散瞳や光過敏症のリスクを最小限に抑えられるよう工夫されています。
点眼治療で注意したい副作用
リジュセアミニ点眼液0.025%の副作用として、羞明、近見視力障害、調節障害、霧視などがあります。
| 症状 | 対応の考え方 |
|---|---|
| 羞明 | 時間の経過とともに軽くなる可能性があります。必要に応じて遮光眼鏡で対処します。 |
| 近見視力障害 | 本やノートなど、近くのものが見えにくくなることがあります。 |
| 調節障害 | 近くを見るときにピントが合いにくくなることがあります。 |
| 霧視 | 物がかすんで見えることがあります。 |
近くが見えにくい、ピントが合いにくい、かすんで見えるといった症状によって、学校生活や日常生活に支障が出る場合には、点眼の中止を検討します。
副作用の感じ方には個人差があります。「治療だから我慢しなければならない」と考えず、見え方に変化があった場合は眼科へ相談することが大切です。
近視の進み方を確認する眼軸長測定
近視の進行を評価する検査の一つに、 眼軸長測定があります。眼軸長とは、目の前面にある角膜から、目の奥にある網膜までの長さです。
眼軸長を定期的に測定することで、眼球がどの程度伸びているかを数値で確認でき、近視の進み方を判断する材料になります。
なお、当院では眼軸長測定は行っておりません。 当院では、視力検査や屈折検査などの結果をもとに、お子さんの近視の状態や経過を確認しています。初診時には調節麻痺下屈折検査も重要です
初診時には、目のピントを合わせる力を一時的に休ませて正確な度数を調べる「調節麻痺下屈折検査」も重要です。
| ● | 初診時に近視の状態を詳しく評価するために必要 |
| ● | 検査に時間がかかる |
| ● | 点眼時に目がしみることがある |
| ● | 検査後にまぶしく感じることがある |
| ● | 一時的に近くが見えにくくなることがある |
このため、初診時の詳しい評価には必要ですが、毎回の近視進行管理には不向きな面があります。日常的な経過観察では、眼軸長を継続的に測定することが、近視の進み方を判断する一つの材料になります。
瞳孔径も治療効果を見るための指標になる
近視進行抑制治療では、瞳孔の大きさも治療効果を考えるうえでの指標になります。
治療を始める前の瞳孔径が小さい近視のお子さんは、治療効果が得られやすいとされています。
治療開始から1か月後の瞳孔径が大きいほど、眼軸の伸びを抑制しやすいことが示されました。
これまで近視の経過観察では、視力、近視の度数、眼軸長などが主な評価項目とされてきました。しかし、瞳孔径も治療効果を判断する材料の一つになる可能性があります。
治療の前後で、瞳孔径がどのように変化したかを丁寧に確認することが大切です。
近視進行抑制治療には眼鏡やコンタクトレンズもある
子どもの近視進行抑制治療には、点眼治療以外にも、近視管理用眼鏡や多焦点ソフトコンタクトレンズなどの選択肢があります。
それぞれ対象年齢や生活スタイル、装用方法、注意点が異なるため、お子さんの目の状態に合わせて治療法を検討します。現在、当院では近視管理用眼鏡および多焦点ソフトコンタクトレンズによる近視進行抑制治療は行っておりません。
近視管理用眼鏡については、今後の導入を検討しています。開始時期や対応内容が決まりましたら、当院ホームページなどでお知らせします。
| 治療方法 | 対象年齢 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 近視管理用眼鏡 | 5~18歳 | 侵襲が少ない 合併症が少ない リバウンドがない | スポーツには不向きな場合がある |
| 多焦点ソフトコンタクトレンズ | 小学校高学年頃から | 近視度数の制限が少ない 1日使い捨てではケアが不要 | 見え方の違和感 ハロー・グレア 角膜炎・感染症の可能性 |
近視管理用眼鏡
近視管理用眼鏡の対象年齢は、主に5歳から18歳です。目に直接触れないため身体への負担が少なく、合併症が少ないことがメリットです。
また、治療を中止した後に近視が急速に進む「リバウンド」がないことも特徴です。一方で、眼鏡をかけたまま激しい運動をすることが難しく、スポーツには不向きな場合があります。
多焦点ソフトコンタクトレンズ
多焦点ソフトコンタクトレンズは、主に小学校高学年頃から検討されます。近視の度数による制限が少なく、1日使い捨てタイプでは毎日のレンズケアが必要ないことがメリットです。
一方で、装用したときに見え方の違和感が生じたり、光の周囲に輪が見えるハローや、光がまぶしくにじむグレアが起こったりすることがあります。また、コンタクトレンズであるため、角膜炎や感染症にも注意が必要です。
治療を始める前に知っておきたいこと
近視進行抑制治療を始める際には、治療の効果だけでなく、治療の限界や継続期間についても理解しておく必要があります。
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1 |
どの治療法を選んでも、近視を完全に止めることはできません。 |
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2 |
治療効果には個人差があります。 |
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3 |
治療は、近視の進行が安定する18歳頃まで続けることが基本です。 |
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4 |
治療法によってはリバウンドが生じるため、自己判断で中断しないことが大切です。 |
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5 |
年齢や生活スタイルに応じて、途中で治療法を変更することも可能です。 |
成長に伴って、学校生活、部活動、受験、スポーツなど、生活スタイルも変化します。治療を無理なく続けられるかどうかも含め、眼科医や視能訓練士と相談しながら、そのお子さんに合った方法を考えていきます。
多くの保護者が近視治療に関心を持っている
近視に関する意識調査では、多くの保護者が近視進行抑制治療に関心を持っている一方で、十分な情報が届いていない現状も示されました。
近視進行抑制治療に関心があっても、どのような治療があるのか、いつから始めるのか、どの程度続けるのかについて、十分な情報を得られていないご家庭が多いことが分かります。
保護者とお子さんが治療内容を理解し、納得したうえで治療を選べる環境を整えることが重要です。
視能訓練士・滝の考察
今回の講義を通して、眼軸長や屈折値だけでなく瞳孔径も治療効果の指標となることを知り、治療の前後における瞳孔径についても注意深く観察していきたいと感じた。
また、多くの保護者が近視抑制治療に関心を持っている一方で、近視に対する知識は不十分であったり、治療法についての十分な説明を受けられていなかったりという現状があることも知った。当院では、近視進行が見られるお子さんには進行抑制治療があることを提示したり、ホームページに治療法についての詳細を掲示し、月単位での説明会を行ったりと、患者さんとそのご家族に十分な知識が渡るような環境が整っていると感じている。検査員として、忙しい日々の診療においても患者さんとそのご家族に寄り添った治療支援を継続していきたいと感じた。
まとめ|近視の進み方を定期的に確認しましょう
| ✓ | 子どもの近視は、特に小学校低学年頃から進みやすくなります。 |
| ✓ | 視力や近視の度数だけでなく、眼軸長や瞳孔径も確認します。 |
| ✓ | 低濃度アトロピン点眼、近視管理用眼鏡、多焦点ソフトコンタクトレンズなどの治療があります。 |
| ✓ | お子さんの年齢や生活スタイルに合わせて治療法を選びます。 |
| ✓ | 近視の進行を緩やかにし、将来の目の病気のリスクを減らすことを目指します。 |
おおるり眼科クリニックでは、視力や近視の度数だけでなく、眼軸長なども確認しながら、お子さんの近視の状態を評価しています。
学校健診で視力低下を指摘された場合や、眼鏡の度数が短期間で変わっている場合、近視進行抑制治療について詳しく知りたい場合は、眼科でご相談ください。
