障害年金はもらえる?手帳申請の条件は?視覚障害の支援をわかりやすく解説
先日、静岡県遠州眼科医会 教育講演会に参加させていただきました。
今回のセミナーのテーマは「視覚に障害がある人に眼科医ができること、かかりつけ医にお願いしたいこと」。
浜松医科大学附属病院 ロービジョン外来担当医・青島明子先生(青島眼科)のご講演でした。普段の診療ではなかなか触れる機会の少ない、視覚障害者に対する支援制度や申請の流れについて、非常に実務的で学びの多い内容でした。
本記事では講演内容に忠実に基づき、視覚に障害を持つ方やご家族、また地域医療に関わる皆様に向けて、制度のポイントをわかりやすく解説いたします。
目が見えにくくなったら、まず考えたい「身体障害者手帳」
視覚に不自由を感じたとき、まずは「身体障害者手帳の申請」を検討しましょう。
この手帳を取得することで、医療・生活・交通などの支援を受けられるようになります。
身体障害者手帳で受けられる主な支援
金銭的な援助
- 電車・バス・タクシー・飛行機の運賃割引
- 医療費助成
- NHK受信料の免除
- 補装具・日常生活用具の補助
相談や支援サービスの提供
- 障害者相談支援業務(福祉サービス利用や専門機関紹介など)
- 障害者雇用枠による就労支援
- 障害者総合支援法に基づく各種福祉サービス
かかりつけ医にお願いしたいこと①
身体障害者手帳の交付対象に該当する患者さんがいれば、手帳申請の案内や声かけをお願いします。
治療後の生活を支えるもう一つの制度「障害年金」
入院や治療の間は、生命保険や傷病手当金で生活費を補える場合がありますが、治療後も働けない場合は大きな不安となります。
そうしたときに役立つのが「障害年金」です。
障害年金の基本情報と支給条件
障害年金は、病気やけがで生活や仕事に支障が出た場合に支給される制度です。現役世代も対象となります。
- 対象年齢は20歳以上65歳未満(65歳以上は老齢年金)
- 障害の程度が1級または2級に該当すること(厚生年金加入者は3級や手当金も対象)
- 保険料の納付要件を満たしていること(20歳前発症の場合は例外あり)
初診日の特定が申請のカギ
障害年金の申請において最も重要なポイントのひとつが「初診日」です。
しかし網膜色素変性症や緑内障など、経過が長い病気では初診日が不明確になりやすく、申請が難航することがあります。
かかりつけ医にお願いしたいこと②
経過が長く今後も視機能の悪化が見込まれる疾患を診断した際は、初診日の領収書や受診記録の保管を患者さんに指導してください。
障害認定日とは?検査のタイミングが重要
障害認定日は初診日から1年6か月後と定められており、この時点での障害の程度により申請方法が異なります。
- 認定日請求:障害認定日時点で等級に該当すれば、最大5年分を遡って申請可能
- 事後重症:その後に障害が悪化し等級に該当した時点で申請
かかりつけ医にお願いしたいこと③
障害認定日の3か月以内に、必ず視力や視野の検査を行い、申請に必要なデータを残してください。
申請は早めに。支援を逃さないために
視覚障害が等級に該当しているのに、申請が行われず支援を受けられていない方もいます。
タイミングを逃さないことがとても大切です。
かかりつけ医にお願いしたいこと④
障害の程度が等級に該当する場合、速やかに申請を勧めるサポートをお願いします。
よくある質問(Q&A)
Q:視覚障害者手帳はどこで申請できますか?
A:お住まいの市区町村の障害福祉課が窓口です。眼科医による診断書と検査結果が必要です。
Q:障害年金と視覚障害者手帳は両方申請できますか?
A:はい。制度は異なりますが、視覚障害の程度が基準を満たせば、同時申請も可能です。
Q:どこの眼科でも診断書を書いてもらえますか?
A:多くの眼科で対応可能ですが、年金用の診断書作成には時間がかかる場合があります。事前に問い合わせることをおすすめします。
まとめ:必要な支援を届けるのは「制度を知ること」から
視覚障害があっても、適切なタイミングで手帳申請や障害年金申請を行えば、生活の安定につながります。ですが、制度の存在や流れを知らないまま時間が経過してしまうケースも少なくありません。
私たち医療スタッフができるのは、気づいたときに患者さんに制度の存在を伝えることです。おおるり眼科クリニックでは、今後も視覚障害を持つ方の支援に力を入れていきます。
この記事が、目の見えにくさで悩んでいる方に届き、支援制度に一歩踏み出すきっかけになれば幸いです。
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