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甲状腺眼症(TED)の症状と検査とは?見逃しやすいサインと治療を解説|学会レポート

甲状腺眼症(TED)の症状と検査|第82回日本弱視斜視学会総会レポート

おおるり眼科クリニックの視能訓練士・滝が、 「第82回日本弱視斜視学会総会」に参加しました。

今回は、学会で学んだ内容の中から、甲状腺眼症(Thyroid Eye Disease:TED)についてご紹介します。

甲状腺眼症は、目の乾きや異物感など、ドライアイと似た症状から始まることがあります。一方で、眼球突出やまぶたの変化、複視などが現れ、見え方だけでなく、仕事や運転、外見に対する気持ちにも影響することがあります。

この記事で分かること

甲状腺眼症(TED)とは

甲状腺眼症は、目の周囲にある筋肉や脂肪組織などに炎症が起こる病気です。英語では「Thyroid Eye Disease」といい、頭文字を取ってTEDと呼ばれます。

バセドウ病に伴ってみられることが多く、橋本病の方に起こる場合もあります。ただし、甲状腺機能の検査値が正常であっても、甲状腺眼症がみられることがあります。

甲状腺の数値が正常でも注意が必要です

甲状腺機能の数値だけでは、甲状腺眼症の有無を判断できない場合があります。目に特徴的な症状があるときは、眼科的な評価も重要です。

甲状腺眼症の初期症状

甲状腺眼症の初期には、次のような症状がみられます。

初期に気づきたい目の変化

症状の現れ方や程度には個人差があります。初めはドライアイと思われるような症状だけであっても、経過の中でまぶたや眼球の位置、見え方に変化が現れることがあります。

見え方と心理面の両方に影響する

甲状腺眼症は、目の症状だけでなく、日常生活や気持ちにも大きな影響を与えることがあります。

影響する面 具体的な影響
視機能面 運転、仕事、家事、趣味や娯楽などが制限されることがあります。
心理面 顔つきの変化によって、写真に写りたくない、人目が気になる、人と会うことに不安を感じるなどの心理的負担が生じることがあります。
外見の変化も大切な症状の一つです

視力が保たれていても、眼球突出やまぶたの変化によって強い心理的負担を感じる方がいます。見た目に関する悩みを、単なる美容上の問題として軽く捉えないことが大切です。

甲状腺眼症の初期診断は難しい

今回の講演では、甲状腺眼症の患者さんのうち、初診時に別の病気と診断されていた方が58%にのぼるという報告が紹介されました。

講演で紹介された調査では
初診時の誤診 58%
TEDの初期診断の難しさが示されました

初期にはドライアイ、アレルギー、眼精疲労などと似た訴えがみられるため、目の症状だけで判断するのではなく、まぶたや眼球の位置、眼球運動、既往歴などを総合的に確認する必要があります。

診察で確認する見た目と姿勢の変化

目の周囲に現れる変化

眼球運動と頭の位置

甲状腺眼症では、目を動かす外眼筋が硬くなり、動きが制限されることがあります。特に下直筋が拘縮すると、上を見る動きが難しくなる上転障害がみられます。

顎を上げる「chin up」の姿勢

上を見にくい方は、見やすい下方視を保つため、無意識に顎を上げた姿勢になることがあります。目の位置だけでなく、患者さんの頭の位置や姿勢も重要な観察点です。

複視は「二重に見える」とは限らない

診察では、目が乾く、ゴロゴロする、目の奥が痛い、圧迫される感じがする、物が二つに見えるといった自覚症状を確認します。

ただし、複視がある方が必ず「二重に見える」と表現するとは限りません。

患者さんが表現する複視の例

患者さんが使う言葉をそのまま聞き取り、複視の可能性を考えながら詳しく確認することが大切です。

代表的な3症状があれば追加検査を検討

甲状腺眼症で注目したい3つの症状

このような症状がみられた場合は、甲状腺眼症を念頭に置き、必要に応じて追加検査を行います。

バセドウ病や橋本病と診断されたことがないか、過去の病歴を確認することも重要です。ただし、甲状腺機能が正常であっても甲状腺眼症が起こることがあるため、既往歴がないことだけで除外はできません。

甲状腺眼症で行う主な検査

甲状腺眼症が疑われる場合は、目の機能や状態を多方面から確認します。

検査 確認すること
視力検査 視力低下の有無を確認します。
眼瞼検査 まぶたの位置、腫れ、赤みなどを確認します。
眼球突出度検査 眼球がどの程度前へ出ているかを測定します。
眼位・眼球運動検査 目のずれや動きにくい方向を確認します。
眼圧検査 目を動かしたときの眼圧変化も確認します。
立体視検査 左右の目を使って立体的に見る力を確認します。
上方視で眼圧が上がることがあります

外眼筋の拘縮による上転障害がある場合、上を見たときに眼圧が上昇することがあります。そのため、通常の正面視だけでなく、上方視で眼圧を測ることも評価の一つになります。

複視や眼球突出を起こす緊急疾患

複視や眼球突出は、甲状腺眼症以外の病気でも起こります。中には緊急の治療が必要な病気もあるため、随伴症状を確認することが重要です。

病気 注意したい症状
内頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF) 頭痛、拍動性の耳鳴り、結膜血管の拡張
眼窩蜂窩織炎 頭痛、強い痛み、発熱、倦怠感
海綿静脈洞血栓症 激しい頭痛、痛みを伴う眼球運動障害、発熱
悪性リンパ腫 発熱、痛みのないしこり
強い痛みや発熱、激しい頭痛を伴う場合

急に物が二重に見える、眼球が突出した、目が動かしにくいといった症状に、強い痛みや発熱、激しい頭痛などを伴う場合は、早めの医療機関受診が必要です。

検査員は早期発見のキーパーソン

視能訓練士をはじめとする検査員は、診察前に患者さんと接し、症状を聞きながら検査を行う立場にあります。

早期発見のために求められる力

「ぼやける」「焦点が合わない」といった何気ない言葉から複視の可能性を考えたり、必要に応じて検査を追加したりすることが、早期発見につながります。

テプロツムマブによる新しい治療

テプロツムマブは、甲状腺眼症の発症に関係するIGF-1受容体の働きを抑える薬です。

眼球突出や眼球運動の改善が期待される治療で、甲状腺眼症の治療に新しい選択肢が加わりました。

期待される効果

眼球突出の軽減や、眼球運動・複視の改善などが期待されます。治療の対象となるかどうかは、病気の活動性や重症度、全身状態などを踏まえて判断されます。

テプロツムマブで注意する副作用

治療では効果だけでなく、副作用についても十分な説明を受け、必要な検査や経過観察を行うことが大切です。

視能訓練士・滝の考察

第82回日本弱視斜視学会総会に参加して

今回の講演で、甲状腺眼症は初期診断が難しく、実際に初診時に誤診された患者さんが58%にまでのぼることを知った。

見逃しやすいTEDを早期発見できるようにするため、特徴的な症状を常に頭に入れ、必要に応じて検査を追加したり既往歴を聞いたりなど、臨機応変に対応できるよう努めていきたい。また、見た目の問題ついては医療においてしょうがないと軽視されがちであるが、患者さんにとっては心理的負担が大きくQOLの低下に繋がってしまうことを改めて実感した。患者さんへ適切な情報提供ができるよう、最新の治療情報についても継続して学んでいきたいと感じた。

まとめ|目や顔つきの変化を見逃さないために

甲状腺眼症では小さな変化を総合的に確認します

目の乾きや異物感に加えて、まぶたの位置が変わった、目が前に出てきたように見える、焦点が合いにくい、物が重なって見えるなどの変化がある場合は、眼科でご相談ください。

バセドウ病や橋本病の治療中の方は、目に現れた変化について、内科の主治医と眼科の双方へ伝えることも大切です。

※本記事は学会で学んだ内容をもとに、患者さん向けに分かりやすくまとめたものです。症状や治療方法は、病気の活動性、重症度、全身状態などによって異なります。
この記事の監修医師
おおるり眼科クリニック 院長 鈴木 徹
日本眼科学会認定 眼科専門医

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