小児眼科
pediatric ophthalmology
小児の眼疾患は、視機能の発達に重大な影響を及ぼすものが多く、早期発見と適切な治療が重要です。
小児眼疾患は、屈折異常や斜視、弱視だけでなく外眼部、前眼部、中間透光体、眼底、中枢神経疾患、先天性緑内障など広範囲に渡ります。小児眼は成人とは大きく異なり、より専門性が問われます。小児期における視覚障害は、その後の人生に大きく影響を残します。そう言った意味でも保護者の方には、充分な注意を払っていただき、少しでも異変を感じたら眼科専門医に相談してください。当院では小児の健やかな視力を守っていきたいと考えています。
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小児眼科の一次医療
院長は大学病院時代、未熟児網膜症の診療にも携わっておりました。公立病院時代および開業してからも、長年小児眼科の診察を行っております。
当院には多くのお子さんが受診しており、中には夏休みや冬休みを利用して定期的に経過観察をしているお子さんもいらっしゃいます。 -
必要に応じた検査、経過観察
これまで、学校保険委員として市の職員さんや保健婦さん、視能訓練士さんと協力して、市内の三歳児健診および色覚検査などの健診体制を作ってきました。当院では最新の検査機器を揃え、小児の検査および診察を行っています。院内は明るい雰囲気を保ち、お子さんが恐怖心を抱かないような空間づくりに努めています。
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小児眼科専門病院との病診連携
斜視、弱視、先天性鼻涙管閉塞、眼腫瘍など専門性の高い小児眼科および手術等が必要な場合は、県内の眼科専門病院に紹介しております。長年の診療経験より、連携先の眼科専門医や病院と信頼関係を構築していますので安心してご来院ください。
三歳児健診について
三歳児健診は、眼の発達を妨げる原因を早期に発見し、早期の治療につなげるために行われています。治療の時期が遅れると眼の機能が十分に発達しないことがあるため、三歳児健診は特に重要です。
多くの場合、視能訓練士などによる眼位検査や屈折異常、視力検査などのスクリーニングをしています。三歳児健診で検査が十分にできない場合や、治療および詳しい検査が必要なお子さんには、眼科専門医の診察をお勧めしています。乳幼児からの視力の発達を妨げる斜視・弱視などはできるだけ早く発見し、治療を開始することが大切です。
そのため、三歳児健診は必ず受けてください。当院では乳幼児の患者さんが受診された場合、「三歳児健診のしおり」をお渡ししてしっかりと説明を行っています。検査の重要性と正確性のために、ご自宅で行うお子さんとの視力検査練習の大切さや方法も指導しております。
こんな症状はありませんか?
自ら症状を訴えることができない小児期では、保護者がお子さんと接していて感じる顔つきや目つき、しぐさの異常が受診のきっかけとなります。保護者の方は、日頃からお子さんの様子を注意深く観察し、異常を感じた場合は眼科専門医を受診して症状を詳しく伝えてください。
しぐさや症状をスマホ等であらかじめ撮影し、診察時に医師に見せていただくとより詳細な状況を確認することができます。三歳児健診で眼の病気や屈折異常が発見できないこともありますので、保護者の方の日頃の観察は非常に大切です。
目の異常・病気の可能性がある症状
乳児
- 両眼の視線が合っていない
- 目が揺れる
- 目でものを追わない
- おもちゃに反応しない
- 涙および目やにが止まらない
幼児・年長児
- 遊びが長続きしない
- 目を細める
- 目にすごく近づけてものを見る
- 字がマス目から大きくはみ出す
- 異常にまぶしがる
乳幼児期に注意したい病気
小児眼科は、疾患が特殊な上に治療方法も数々の特殊性を持っています。小さいお子さんでは恐怖心からスムーズに診察や検査を行わせてくれないこともあり、成人に比べ時間がかかります。
その場合、充分な診察が行われず、屈折異常や眼位異常が見過ごされてしまうケースがあるのです。成人時に十分な視力を確保するためにも、忍耐強い通院や診察が必要になります。そうしたケースを予防するためにも、斜視、弱視についてより詳しく知っておくことが大切です。
弱視
概要
出生直後の正常新生児の視力はぼんやり見える程度ですが、鮮明な像を両眼同時に中心窩(ものを見る中心点)に結像させて刺激することにより、視機能は発達します。
弱視とは、視覚感受性期間内に何らかの影響(先天性白内障、斜視、屈折異常、その他眼疾患等)で適切な視覚刺激を妨げられることによって、視力の発達が阻害され、生じる視力障害です。視力の良好な発達を維持するためには、こうした原因を取り除く必要があります。
放置すると…
病気の種類によっては、著しい視力障害のリスクを生じる場合もあります。
また、強度の屈折異常や眼位異常(斜視)などを放置すると、視力は低視力のままで推移し両眼視機能(ものを立体的に見ること)の発達も妨げられます。
種類
屈折異常弱視
両眼同程度の屈折異常が原因で起こる、両眼性の弱視です。
不同視弱視(ふどうしじゃくし)
片方の目が強い遠視や近視、乱視などの屈折異常のため弱視になることです。日常生活で不便さを感じにくいため、気がつかないことがよくあります。
三歳児健診で見つからず、就学時健診で初めてわかることもあり、早期治療ができずに視力の発達が止まってしまうケースもあります。
斜視弱視
常に固視眼(ものを見る時の目が決まっている)でものを見ているため、片眼が弱視となります。
三歳児健診で見つからず就学時健診で初めてわかることもあり、早期治療ができずに視力の発達が止まってしまうケースもあります。
治療方法
いずれの場合も治療は眼鏡矯正です。眼鏡で手助けを行い、はっきりとした形を見ることで脳の成長を促します。
【屈折異常弱視】強度の遠視や近視に対し、真の屈折度数を調べ、適切な眼鏡を装用することです。
【不同視弱視】眼鏡で矯正することに加え、視力の良い目の目隠しをし、見えにくい眼でものを見る訓練をします。
【斜視弱視】眼鏡による矯正や目の位置のバランスを改善する手術、目隠しをして見えにくい眼でものを見る訓練などの治療を行います。
ものを見る訓練は薬剤(ピントを合わせる力を取り除く目薬)で調節力を取り除いて屈折異常を検出し、適正な眼鏡を装用の上、片眼性弱視であれば1日数時間、よく見える目をアイパッチなどで遮蔽することで、見えにくい眼でものを見る訓練を行います。当院では数ヶ月ごとの定期的な経過観察(視力検査、眼位検査、立体視検査など)を行い、必要に応じて眼鏡度数の変更を行います。乳幼児期の弱視治療眼鏡装用であれば、公的補助が受けられますのでスタッフに相談してください。
斜視
概要
斜視とは、左右の目線のズレのことを意味します。乳幼児期に家族が眼の位置や動きの異常に気付いたり、保育園、幼稚園などで指摘されて受診されることが多いようです。
視線がずれる、眼の動きがおかしい、頭を傾ける、片目をつぶるなどいろいろな症状があり、原因は屈折異常をはじめ、神経疾患、眼球内腫瘍(※この場合、白色瞳孔といい、眼の奥が白く光って見えることがあります。このときは要注意です。)及び頭蓋内腫瘍、眼球の器質的疾患など様々なケースがあります。多くは屈折異常、もしくは純粋な眼位異常のことが多いので、むやみに怖がらず速やかに受診してください。
放置すると…
乳幼児に起こる斜視の治療目標は、正常な視力の発達および両眼視機能の発達です。強度屈折異常を放置した場合、視力の発達が妨げられ弱視となるケースもあります。
また、斜視は様々な原因や病態によって生じると前述しましたが原因の速やかな解消が大切です。放置した場合、病状によっては失明のリスクが生じるケースもあります。
種類
内斜視
外斜視
左目上斜視(右目下斜視)
右目上斜視(左目下斜視)
交代性上斜位
治療方法
弱視の場合、眼鏡での矯正に加えて、ズレやすい目を使う様に促すために目隠しでの治療を行います。
一般的に、生後6ヶ月までに発症した斜視を先天性内斜視(乳児内斜視)と言います。また、調節が関与して発症する内斜視を調節性内斜視と言います。
強い内斜視(内斜視で斜視角が非常に大きいケース)では視力の発達および両目でものを見る機能の発達を期待して、早期の手術が必要となる場合があります。強度遠視などの屈折異常が存在し、ピントを合わせる力(調節力)が介入して生じる屈折性調節内斜視では、ピントを合わせる力を取り除く目薬(調節麻痺薬)を使用して行う屈折検査により、遠視や乱視を完全矯正することを原則とします。調節麻痺下屈折検査を定期的に行い装用している眼鏡が適正であるかチェックをし、両目でものを見る力を育てます。
ご両親へのメッセージ
この世に生を受けて生まれてきた赤ちゃんは、大変かわいい存在です。特に第一子では些細なことでも大変心配になりがちですが、むやみに色々なことに心配をせず、落ち着いて赤ちゃんの表情や態度を観察してください。
短期間の観察ではわからないことでも、少し間を空けて注意してみていくと変化に気づくこともあります。お子さんを撮影した写真なども参考にしてみたらどうでしょう。
多くの場合、重大な疾患が隠れていることは少ないものですが、保護者の方がおかしいという直感を持ったならば速やかに眼科専門医を受診してください。診察の結果、異常がなければそれは良いことなのです。見過ごしてしまうことの方が心配です。思い当たることがございましたら、お気軽にご来院ください。